COLUMN
前回のコラムでは、サブスクを導入するメリット3つを紹介いたしました。
① 成熟産業への差別化ポイント
② 新規依存ではなく既存客主体の収益化(ストック収益)
③ データ分析による新規/追加提案が可能
今回はそのメリットを踏まえて、我々のクライアントで実際にスタートした、美容室の「ヘアカラーし放題サブスク」の事例をご紹介させていただきます。
<サブスク導入の動機や背景>
美容室業界はオーバーストア化が進んでいる
成熟産業化することで、他社と差別化のできていないサロンが倒産、廃業している数が増えています。(毎年増加しており2019年は過去最高ペース)
そんな美容室経営ですが、差別化するポイントは、例えば「技術面」や「取扱メーカー」など複数あります。
しかし、一番わかりやすいのが「高価値/価格(お得感)」となります。
この状況下で、クライアントのA社は
「ヘアカラー定額サブスクサービス 毎月○○円でヘアカラーし放題!」というサブスクを始めました。
(価格に関してはサブスクビジネスにおいて非常に重要なポイントなのでここでは伏せさせて頂きます)
従来の業界構造では、「ヘアカラーは都度料金を支払うもの」という当たり前の概念がありましたが、このサービスを打ち出す時点で差別化に成功するのです。
(色々ポイントはありますが詳細は伏せさせて頂きます)
理美容業界ではエリアや規模によって多少変化はあるものの、ある程度新規客に依存したビジネスモデルであると言えます。
(世の中のほとんどのサービスが新規依存型です)
なぜならば、まずこれをお読みいただいているみなさま自身は、美容室を利用した際、次回のサロン予約をどれほどの方が取られていますか?
また料金に関しては基本的に都度払いではないでしょうか?
サブスクにシフトしていくことで一番のメリットは、
「来月いくらの売上が入るのかを先立って可視化できること」です。
またこれまでの顧客を会員(=一定の料金を継続的に支払ってくれる顧客)として取り扱うことができるので、今の既存のサービスの価値も可視化することになります。
美容室経営でいうならばヘアカラーというメニューをサブスク化することで、来月の売上見込みを立てるだけでなく、サブスクを契約している限り、その顧客は生涯顧客として通い続けてくれることになります。
それも、会員化として重要な指標と言えるのではないでしょうか。
サブスクサービスをスタートする際にどのツール(プラットフォーム)を利用するかが重要
単純に月額課金してくれるペイメントサービスだけではなく、顧客の利用状況や動向、嗜好性を可視化できるものや、こちら側からキャンペーンやお知らせを配信できるもの、また外部の予約サービスやシステムと連携するものが必要となってきます。
実際にA社では、サブスクプラットフォームを導入して、お客様や現場スタッフの利便性を向上するだけでなく、メッセージの配信機能などを利用して、トリートメントや物販の提案を行いプラスの売上に繋げたり、来店頻度が落ちてきた離脱しそうな顧客へリピート提案を行ったりされていらっしゃいます。
これまでリアル(アナログ)では提案できなかった部分を、サブスクを導入することで可視化することができ、サブスク以外の既存ビジネスとのシナジー効果も生まれています。
まだまだ他にもサブスクを導入するメリットはあるのですが、ここからはサブスクビジネスを始める上で成功するための2つのポイントをご紹介します。
①プライシング(価格設定/サービス設計)
②事業計画(投資シミュレーション及び利益計画)
上記が非常に重要で、サブスクにおいては大きな肝となります。
①に関してはエンドユーザーに提示する価格がエンドユーザーのイメージする負担(定価)よりも低ければ低いほど、お得さを感じて利用欲が上がります。
一方で事業者目線からすればこの価格を高く持てば持つほど、単一ユーザーあたりからの獲得金額が高くなり、利益に繋がります。
しかし、高価格に固執してしまうとお得感を感じられないため、ユーザー数が伸び悩み、あまり大きな成果につながらないまま、そのビジネス自体が衰退していくでしょう…
ですから、理想はきちんとユーザーに支持される金額であること+利益のとれる価格に設定することが大事であり、ここを間違えると将来性がなくなってしまいます。
②事業計画づくりに関しては具体的に目標ユーザー数の設定に加えてそのユーザー数に到達するまでのスケジュール、そこまでにかかるコストやシステム機能の付加などを計算する必要があります。
基本的にサブスク自体はユーザー獲得を先行して行うことが必要なので、ある時期までは収支としてはマイナスになりますが、反対に到達点を超えるユーザー数になると利益化に成功するモデルになります。
よってこの計画をなるべく正確に設定し、ズレがあったときは適した基準のもと修正する必要があります。
次回は、サブスクビジネスを始めるために「欠かしてはならない重要な3つのポイント」をご紹介させていただきます。
デジタルイノベーションラボ 井筒 量子